【人事異動のストレス〜気持ちがいっぱいいっぱいな方へ】 2018/03/26

新年度になるこの季節、職場の多くで人事異動がありますね。

希望の部署に行ける方・そうでない方、慣れ親しんだ同僚が異動となった方、 勤務地が変わって生活環境が変わる方、家族の人事異動で自分の生活リズムが変わる方など。 様々な立場で環境の変化が訪れる時期です。

私は以前この時期が苦手だったのですが、一方で、就職や転職・人事異動などで環境が大きく変わっても、 それなりにうまくやっていける適応力の高いタイプだと思っていました。 苦手意識の裏では、環境に適応するために人一倍"やる気"を出して、周りを観察して、 なんとかうまく溶け込もうといつも努力をしていましたが、それは社会人として当たり前。 表面的には「環境の変化が苦手な分、人より頑張ればなんとかなる」という意識です。

このような状況は多くの社会人に当てはまるのではないでしょうか? ただ、適応しているように見える方々の中にも、

・うまくストレスケアができている場合

・表面的には適応しているが、心は苦しくなっている場合

があります。これは、かつての私がそうだったように見た目では分かりにくく、 「これくらいは皆やっていることだから」と本人すら心の負荷に気づいていないことも多いです。

しかし、後者のように心の負荷に気づかず気力で乗り越えようとするタイプや、 ストレスとなっていることに気づいていても「自分さえ我慢して頑張れば」 という自分を顧みない態度は、知らない間に心身を蝕んでしまいます。

では、こうした環境の変化に伴うストレスに対して、できるだけ心の健康を保ちながら過ごすために、 マインドフルネスSIMTはどのように役に立つのかを紹介します。

今回は、人事異動という状況にありがちな例で取り組み方を説明しましょう。

気づく・観察する

マインドフルネスSIMTの観点から大切なことは、 まずは自分の心身の状態にありのままに気づくことです。 決して、ストレスを感じていないかのように振舞うことや、 心の負荷を無視して環境に適応することではありません。

気づくことというと、 「環境が変わって、忙しくなって、気持に余裕がなくなっているのにはとっくに気づいています」 なんて声が聞こえてきそうですが、マインドフルネスでいう"気づき"は少しニュアンスが異なります。 「注意深く"気づく"」「丁寧に意識して"気づく"」という感じです。

私たちはいつも溺れている

"気づき"がなければ、不安やイライラ、それに伴う思考にどっぷりとのみ込まれてしまいます。 呼吸は浅くなりますし、体は緊張状態となり、頭痛や肩こりの原因となります。 ストレスが大きければ胃痛や吐き気などの症状にもつながりかねません。 身体症状の影響でますます心に余裕がなくなるので、さらに焦りやイライラが募り悪循環に陥ります。

しかも、私たちはこれらを当然のように受け入れています。 苦しみを和らげる方法があることを知らないからです。 多くの人が苦しみという海の中で溺れているのにも気づかず、 頑張ればなんとかなると思って泳ぎ続けます。 また、知識として方法を学んだとしても、本当にそれに取り組もうとする人はごく一部です。

溺れないためには、正しい息継ぎ(呼吸法などの実践)を学び継続して取り組むことが必要なのです。

あなたは自分のライフセーバー

苦しみの海で溺れている自分を助けることができるのは自分だけです。 取り組みの例を、人事異動の状況に戻って見ていきましょう。

新しい環境で気持ちがいっぱいいっぱいになっているとき、自分の思考や感情を少しだけチェックしてみてください。 タイミングは、パソコンに向かったとき、ドアを出入りするとき、電話のベルが鳴ったときなど、 自分で決めておくと忘れにくくなります。そのときのチェックは次のような方法です。

@「早く慣れよう、今日も頑張ろう」(と意気込んでいると気づく)

A「新しい上司・同僚はどんな人か気になる」(と思ったことに気づく)

B「覚えることが多い!」(から焦っていると気づく)

C「体が緊張している」(と気づく)

D「これくらいはできて当たり前だ」(と考えたことに気づく)

E「仕事量が分からない、いつまで続くの」(と不安を感じたことに気づく)

普段は、「」内の思考にとらわれ、自分の状況に注意深く気づいていませんので、 心身の状態がそれらに巻き込まれていきます。 しかし、()内のように自分の状況を丁寧に意識し、苦しみの入り口となる思考に気づくことが、 これまでは当然のように受け入れてきた(意識すらされなかった)心の負荷を軽くしていくのです。

大切なのは、流れ作業的に気づくのではなく、自分が気づいていることにも気づいて観察するような心持ちです。

もし、思考のチェックをしたときの内容が、建設的で必要な(自分を苦しめない)ものであれば、 建設的な思考だと気づけばよいだけです。上の例@で挙げた「早く慣れよう、今日も頑張ろう」 という思考も、純粋な原動力や集中モードへのスイッチとなるような場合なら問題ないですよね。

しかし、新しい環境下で気持ちがいっぱいいっぱいで苦しくなっているときの思考は、 不当に自分を駆り立て、 "いま"必要な行動を妨げたり充実感を損なったりする思考や感情につながる可能性があります。 ですから、思考の内容が自分にとってよくありがちな身近なものであっても、 一旦考え続けるのを止めて自分の呼吸に立ち返ります。

このトレーニングの意義

そもそも、私たちの心は、すぐに過去や未来のことを考える癖がついています。 その思考に出てくる過去の出来事や未来の妄想は、現在は存在していないもので、 自分の心の中に一つの心理現象として存在しているにすぎません。

ところが、そのような理解がなく、"気づき"の力も充分でないと、 環境が変わったときは特に過去や未来のことを考えがちです。 なぜなら、「前の部署のように今は役に立ててない」「早く仕事を覚えなければ周りに迷惑をかける」 などと、過去と今を比べたり、これから先のことを考えるきっかけが普段より増えるからです。

"気づき"のトレーニング〜マインドフルネス〜は心の筋トレと言われています。 続けていると、普段の生活ではもちろん、環境の変化があったときでも、 過去や未来にさまよう心を"いま"に戻してくれる助けとなります。

私たちが生きているのは"いま、ここ"ですから、 常にその瞬間を充実した時間へと変えることができれば、自然と心は安定してくるはずです。

効果はすぐにやってくる?

気になるのは、そんなことをやって本当に効果があるの?すぐに効果を感じるの?ということでしょう。 "気づき"には、個々人のセンスのようなものもありますし、真剣に取り組もうという姿勢も関係します。

とくに、あまりにも海の深いところで溺れることが習慣になっていると、海の中で上下左右が分からなくなるように、 しばらくは効果を感じられない方がいるかもしれません。 しかし、「自分はこの苦しみを適切に扱って、心を楽にしたいから取り組む」という意志をもって続けていけば、 必ず効果はあらわれます。

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